看護・高齢者ケアプログラム体験談・視察レポート
ハノイ異文化紀行
1990年代のホーチミン(ベトナム南部)はベトナム戦争が終わってまだ二十数年しか経っていなかったせいか、町にはホームレスの人が多く生活していました。片足がない人、片目の人など、生活のために臓器売買などに関与していた人も多くいた、と聞いた事を思い出します。街の中には、何日もお風呂に入っていない、日々の食事も十分にできない人が多く生活し、大人から子どもまでチップ欲しさのために外国人旅行者につきまとうイメージが強くありました。そのため、個人旅行でベトナムに行くことはあまり乗り気ではなかったことは事実です。
2019年に約30年ぶりにベトナム北部の都市、ハノイへ降り立ちました。最初に思った気持ちは「すごく近代的になったなぁ〜」です。近年のベトナムは著しい発展を遂げていたのです。わたしは今回、ベトナム北部に位置するハノイを訪れました。街の中には、ファストフードショップやカフェが並び、人々はケータイ電話を使って生活しています。デパートやショッピングセンターには、ブランド品や綺麗な品物が並び、多くの家族連れで賑わっています。日本のショッピングモールにいると錯覚してしまうほどでした。
しかし、場所によってはインフラが整っておらず、むき出しの電線、道の一部が砂利道などもまだありますが、人々はバイクに乗り、仕事や学校に行き、路上のカフェや居酒屋で語らいを楽しみ、また一生懸命働く、そんな姿を目にしました。キラキラと光る高層ビルと、露店や屋台が立ち並ぶ街中に多くの人が行き交い、バイクのクラクションを鳴らし、大きな声をかわしながら人が流れて行く、近代と歴史が融合しながら成長を遂げている、パワーにみなぎっている町という印象です。
《街の中の電柱、電線がぐちゃぐちゃ》 |
《ハノイの旧市街》 |
《旧市街のお店》 |
《ショッピングセンター(ロッテセンター)》 |
ベトナムはフランス領土時代があったため、ヨーロッパを思い出させるような場所が多くまだ残っています。フレンチコロニアルを受け継ぐゴシック建築のような建物も多く存在します。例えば、聖ジョセフ大聖堂。一歩中に入るとまるで、フランス。ステンドグラスに囲まれた教会はまさにノートルダム大聖堂の中。天使や聖人がステンドグラスに描かれていて、とても心が癒される空間です。
《聖ジョセフ大聖堂》 |
《聖ジョセフ大聖堂内、ステンドグラスの数々》
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《聖ジョセフ大聖堂内、ゴシック建築が感じられる設計》
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ベトナムの医療について
ベトナムでは診療報酬は省によって異なります。また、公立病院と私立病院で得られる収入も異なり、病院の運営やステータスが大きく違うのを感じます。公立病院で勤務する医療従事者は国家公務員であり、社会的ステータスが高く、国から多くの恩恵を受けています。
それにもかかわらず、公立病院は何故か機材や施設は古く、私立病院に比べたら野戦病院のような感じです。都心にある公立病院は患者で溢れているのが現状で、ハノイやホーチミンにある病院では120-160%の患者を受け入れています。一つのベッドを2人の患者でシェアしている場合も少なくありません。一方、私立病院では治療に必要な機材や医師が十分に配置されており、公立と私立病院の格差を感じます。検査や治療によっては、ベトナムから日本、シンガポールやタイに行く、富裕層の方も少なくないそうです。
《私立病院内》 |
《私立病院の病室内》 |
ベトナムの看護について
公立病院は広く、日本の昭和の頃を思い出すような、おじいちゃんやおばあちゃんが行くような田舎にある病院といった印象です。伝統医療(鍼灸や漢方を使った治療法)など西洋医療にはない科があります。病院のロビーは一見、患者がすごくいるように感じましたが、半分の方は家族か付き添いの人だと現地のガイドさんから教えてもらいました。看護師の位置付けはドクターのアシスタントという感じで、あまり責任のある仕事もなく、どちらかと言うと日本の介護士的な役割です。
《公立病院》 |
私立病院の看護部長に採用時に一番大事にしているポイントを尋ねたところ、「ルックス」と答えられたことに視察に行った全員が「えっー」と声を出したほど衝撃が走りました。この時代にこんなセクハラ的なコメントが通用するところに正直、研修に参加した20代の方々には驚きを隠せなかったご様子でした。ベトナムの看護はアメリカや日本の看護レベルにまだまだ届いていない感じがしましたが、命を扱う意味では世界共通で、ベトナムの看護師の熱い思いや日々の努力はすごく感じます。
《私立病院の看護師》 |
《私立病院の受付》 |
ベトナムの患者さんの中では、入院中のストレスを看護師にぶつけたりすることは日常茶飯事のようです。ですので、私立病院では採用時にルックスを重視して、日々の患者さんの入院生活が和らげられるようにしているとの事。日本では考えられない発想ですね。
ドクターの多くは海外でのご経験や留学のご経験があるようで、英語が話せる方が多いようです。
ベトナムで看護師を目指している学生さんも、英語で看護課程を1年余分にかけて看護師を目指している方が多くいました(普通の看護課程は4年、英語で看護科を取っている方は5年間勉強します)。それは卒業後、海外で働くことを目標にしているからです。ベトナムの医療のトップと言えるハノイ医科大学を訪問した時に、看護師を目指している大学生のほとんどが第二言語を話せることにびっくりしました。英語、日本語、中国語、ドイツ語と幅広かったことに驚きました。中には卒業後、ドイツの大学病院で勤務が約束されている方もいました。ハノイ医科大学ではグローバルに対応できる看護師の育成を目指していて、現在、授業の殆どが英語で実施されていて、California State University, Long Beach のナーシングカリキュラムを導入しているそうです。看護学科の教授も英語がとても堪能でした。
《ハノイ医科大学の看護学部》 |
《ハノイ医科大学の伝統医療科》 |
《ハノイ医科大学の学生》 |
《ハノイ医科大学の学生と交流》 |
ベトナムではEPA(経済連携協定)を介して、看護、介護の技能実習や特定技能、留学などで日本へ行く機会が増え、医療系人材の市場は大きな動きを見せています。それでも、医療職としてのルートは限られており、日本で看護師として働きたいと考えるベトナム人にとっては、まだまだハードルが高いようです。
私立病院訪問時に、EPA制度を利用して、日本で看護師の国家資格を取得したベトナム人看護師のAさんと話す機会がありました。Aさんは来日後、まず、介護のアシスタントをしながら日本語を勉強し、およそ3年かけて日本で看護師免許を取得されました。免許取得後は地方の病院で働いていたそうですが、文化の違いなど様々な事に直面し、とても大変な毎日だったと振り返られていました。日本の方はとても優しく、お給料もたくさんもらえて生活するには良かったですが、やはりベトナムやベトナムにいる家族が恋しくて、帰国を決められたそうです。Aさんは「いくらお給料がよくても、もう日本では看護師をしたくない」とお話しされていました。はっきりとおっしゃらなかったですが、そこにはやはり文化の違いが大きかったのではないかと感じました。
ベトナムと日本の医療の違い
日本では考えられませんが、ベトナムでは診察を受けるのに、まるで商品を購入するかのようなネット上の広告がよく記載されています。例えば:「◯◯検査と◯◯検査を同時に受けると50%安くなります」など、日本では考えられない医療広告がたくさんあるそうです。日本と大きく違うのは、恐らく、ベトナムの多くは混合診療になっているためだと思います。日本では混合診療は禁じられているため、症状に合った科へ受診します。ベトナムも日本同様、医療費は出来高制を基本としていますが、ベトナムの場合は、価格が省ごとに異なり、診療報酬体系が全国統一されていません。
《ベトナムの医療広告》
ショッピング&観光
ハノイの旧市街には女子がときめく可愛く、プチプラな雑貨屋さんがたくさんあります。街を歩くだけでもインスタ映えする通りがたくさんあります。
《ハノイ雑貨色々》 |
《ハノイ雑貨色々》 |
その中でも、印象に一番残っている場所は「トレインストリート」。
建物の間の狭い路地に線路が敷かれていて、一日に数回電車が通ります。
電車が通らないときは住民の道として利用されています。(2019年の10月までは観光客も普通に歩くことができましたが、2020年1月に行った際には規制されていました。)線路沿いのカフェを利用する人は、線路の上を歩く体験は出来るようですが、線路沿いのカフェの利用が必須になります。電車は本当にギリギリまで通るみたいで、ヨーロッパからの観光客を特に魅了しています。
《トレインストリート》 |
《線路上を歩く》 |
《電車が本当に間近に》 |
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とにかく町の中は原付とバイクが多く、はじめは「絶対にひかれる」と思っていましたが、現地の人は本当に運転が上手で、うまく避けて通ってくださいます。
《道はバイクでぎっしり》 |
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屋台について
お腹が弱くない方であれば、ぜひ町の屋台やカフェでの食事にトライしてみてください。バインミー(フランスパンのサンドイッチ)やフォー(お米の麺)を食べてみるのがオススメです。バインミーはフランスパンの中にベトナムのピクルス(酢漬けの野菜)とベトナムハムなどがサンドされている国民食です。コリアンダー(パクチ)がかなりたっぷり入っていますので、とてもエスニックで東洋と西洋がうまく融合したような感じのサンドイッチです。ベトナムコーヒーと一緒に食べると最高のランチです。ベトナムコーヒーの基本はフレンチプレスした苦味の強いコーヒーを練乳と一緒に混ぜて飲むコーヒーで、すごく甘く、暑いベトナムにはこの甘さが体力を復活させてくれます。
《ベトナムコーヒーとバインミー》 |
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ベトナムの代表的な麺料理といえば、フォーですね。スープが淡麗で濃厚。地元でしかいただけないハーブがたくさんのっているので、レモンを搾って、スパイスの効いた調味料をかけて食べるともう虜になること間違いなし。現地の人は揚げパンをスープに投入して一緒に食べます。
《フォーの屋台、フォーティン》 |
《ベトナム国民食のフォー》 |
《フォーに入れる揚げパン》 |
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《屋台、空いた席を探すのが大変》 |
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食後のデザート
デザートにチェー(ベトナムの代表的なデザート、小豆、タピオカ、蓮の実、栗やゼリーなど入っている)がオススメです。チェーの専門店屋さんが至る所にあります。そこで写真を見て、食べてみたいものを指さしでオーダーすれば、親切な店員さんがすぐにその場で作ってくれます。個々のお店で独自のスペシャルチェーがありますので、それを頼むのもいいかもしれません。味のベースはココナッツミルクを使っているものが多いです。(氷はちゃんとした水を使っているので、安心して食べていただけます。地元の方が多く入っているところは間違いないと思います。)心配でしたら、レストランやホテル内のレストランで食べる事をオススメいたします。
《ベトナムの代表的デザートのチェー》 |
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果物について
気温は比較的に暖かく、湿度が高いベトナムには珍しい果物がたくさん食べられます。代表的なのがドラゴンフルーツ、ロンガン、マンゴスチン。その中でも存在感があるのは果物の王様と呼ばれているドリアンでしょうか。匂いはまるでトイレ。でも、好きな人にはたまらないクセになる味。まるで濃厚なチーズを食べているかのような感じがするフルーツです。日本で食べるとしたら丸ごと購入すると冷凍で8千円から1万円はしますが、ベトナムでは千円ほどでフレッシュ丸ごと買えるので、ぜひチャンスがありましたら怖がらずにチャレンジしてみてください。不味くっても美味しくってもきっと、一生の思い出になるのは間違いなしです。
《果物屋さん》 |
《ドリアン、ドラゴンフルーツ》 |
《匂いが強烈なドリアン》 | 《カットされたパイン、スイカ、とドラゴンフルーツ》 |
ベトナム人
ベトナム全土には合わせて54の民族が住んでおり、その内約9割を占めるのがキン族(ベト族とも呼ばれています)。残る53の民族が少数民族として定義されています。詳しくはハノイの民族学博物館で学ぶ事ができます。初めてベトナムを訪れる方にはとてもオススメなスポットです。
《民族学博物館》
ベトナムの男性
ベトナムでは男子は18歳から25歳を兵役義務の対象とし、2年間の兵役が義務付けられています。そのせいか、男性の方は皆細マッチョでとてもスタイルがいいです。そして、大学に行っている男子の殆どが二か国語を話せるので、とても知的に感じます。ヨーロッパの影響でしょうか、レディーファーストも心得ているので、女子はとてもいい気分になります。(現地のガイドのTさんはとてもガールズに優しく、モテモテでした。笑)
《現地ガイドのTさん》
ベトナムの女性
ベトナムの女性はアオザイ(ベトナム民族衣装)が似合うスレンダーの方が多いです。食文化(野菜中心食)でしょうか、みなさんかなり働き者でスリムです。現地ガイドのTさんが言うには、ベトナムの女性は性格が強めらしいです。私から見たらとても綺麗で頭が良くて、とても働き者が多いイメージです。働き盛りの20代女性は結婚後も家庭を支えるために働いて、家事は旦那さんと分担し、食事は外食が多いようです。これはアジアの国の特徴かもしれませんね。
《アオザイ》
ベトナムコーヒーVSエッグコーヒー
ベトナムコーヒーと言えば、練乳と混ぜて飲むものが一般的ですが、現地の方はエッグコーヒーもオススメと教えてくれました。これは新鮮な生たまごと練乳を一緒にホイップしたものをフレンチプレスしたコーヒーにのせたドリンクです。クリームはとても濃厚で、まるで溶けたプリンかカスタードクリームがのっているようなデザート感覚のコーヒーです。ベトナムの首都ハノイの旧市街にあるお店「CAFE GIANG(カフェ ジャン)」が発祥の地として知られています。
《エッグコーヒー》 |
《CAFE GIANG(カフェ ジャン)》 |
《ベトナムコーヒー》 |
ちょっとびっくりのベトナムのトイレ事情
観光客が多く出入りするところには洋式トイレはもちろんですが、近代的でキレイ且つ機能的なトイレが設置されています。しかし、まだまだ現地の方が使用する一般のトイレは決してキレイとは言えないかもしれません。インフラ整備が追いついていないせいか、多くのトイレではトイレットペーパーは流せません。トイレの横にゴミ箱が置いてありますので、大で使ったペーパーも小で使ったペーパーも同じゴミ箱に入れます。もっとひどい所だと、流す際にトイレの横に設置してあるホースを使って流す所も少なくありません。アジアの国では多くの場所にこのようなトイレを見かけます。
《一般トイレ》
《一般のトイレ、ホースが左側にあります》 | 《一般のトイレ、ペーパーはゴミ箱に》 |
でも、ご安心ください。ホテル、レストランやショッピングセンターにあるトイレは日本と同じような感じで普通にキレイです。
知っていますか?ベトナムではカカオ豆が取れる事?
カカオ豆と聞くと、ガーナやコートジボワールなどのアフリカ産のものを思い浮べる方が多いかもしれません。生産量は多くないものの、ベトナムでもカカオ豆が栽培されており、その味の美味しさは各国のチョコレートファンからも注目を浴びています。
「Pheva」(フェヴァ)のチョコは南部ベンチェ省でとれるカカオ豆が原材料。フランスで培われたショコラティエのノウハウを融合させた手作りチョコレートです。一口サイズのチョコは自分の好きな色のボックス(12個入または24個入)に好きなフレーバーを詰めることができ、購入時には選んだボックスと同じ色の紙袋に入れてくれます。アソート(詰め合わせ)もありますので、フレーバーに悩んだ時にはぜひアソートをトライしてみて下さい。
《チョコレート屋「Pheva」(フェヴァ)》 |
ベトナムのもう一つの名産品!?ベトナムはカシューナッツ大国
実は、ベトナムはカシューナッツ輸出国第一位の国!日本で購入すると少し高めのカシューナッツはベトナムの市場ではかなり安くで購入できます。日本でよく見るのは皮が無い物が多いですが、ベトナムでは皮付きのローストされたカシューナッツが一般的です。皮ごと食べてもすごく香ばしくって美味しいのです。カシューナッツは低カロリーで鉄分、カルシウム、ビタミンB1も含まれているので、少し多目に食べて大丈夫です。
《ベトナム産カシューナッツ》 |
まとめ
看護研修でベトナムに行って新しい技術や看護について学べるかどうかと聞かれると、先進国であるアメリカで看護を学ぶのとは少し違うと思います。しかし、私たちが日本と他国の(ベトナム)看護の違いについて学ぶ事によって、日本の看護の素晴らしさを再確認することができます。学ぶだけではなく、発展途上国のベトナムの医療従事者に日本の看護や医療について教える事はできるかもしれません。実際に、私立病院の看護部長からは日本の看護学生が学んでいる知識はベトナムの看護師が知っている知識以上のものがあるから、意見交換ができるだけでもすごくメリットがあると言っていました。
看護の視点以外で考えると、異文化体験ができるのがベトナム旅行の醍醐味。ベトナムは社会主義共和国、日本の医療政策、医療制度、そして看護との違いがあって、現地のベトナムで施設視察や医療従事者との意見交換はとてもいい体験になるのは間違いないでしょう。先進国のアメリカやヨーロッパでの体験より異文化体験の視点から見るとその違いはより大きく感じられるかと思います。そのびっくりした感じが特に日本の学生にはいい体験で、研修後には学生がひとまわり大人になった事を感じました。
《空港近くから見た夕日》
ハノイ異文化紀行
1990年代のホーチミン(ベトナム南部)はベトナム戦争が終わってまだ二十数年しか経っていなかったせいか、町にはホームレスの人が多く生活していました。片足がない人、片目の人など、生活のために臓器売買などに関与していた人も多くいた、と聞いた事を思い出します。街の中には、何日もお風呂に入っていない、日々の食事も十分にできない人が多く生活し、大人から子どもまでチップ欲しさのために外国人旅行者につきまとうイメージが強くありました。そのため、個人旅行でベトナムに行くことはあまり乗り気ではなかったことは事実です。
2019年に約30年ぶりにベトナム北部の都市、ハノイへ降り立ちました。最初に思った気持ちは「すごく近代的になったなぁ〜」です。近年のベトナムは著しい発展を遂げていたのです。わたしは今回、ベトナム北部に位置するハノイを訪れました。街の中には、ファストフードショップやカフェが並び、人々はケータイ電話を使って生活しています。デパートやショッピングセンターには、ブランド品や綺麗な品物が並び、多くの家族連れで賑わっています。日本のショッピングモールにいると錯覚してしまうほどでした。
しかし、場所によってはインフラが整っておらず、むき出しの電線、道の一部が砂利道などもまだありますが、人々はバイクに乗り、仕事や学校に行き、路上のカフェや居酒屋で語らいを楽しみ、また一生懸命働く、そんな姿を目にしました。キラキラと光る高層ビルと、露店や屋台が立ち並ぶ街中に多くの人が行き交い、バイクのクラクションを鳴らし、大きな声をかわしながら人が流れて行く、近代と歴史が融合しながら成長を遂げている、パワーにみなぎっている町という印象です。
《街の中の電柱、電線がぐちゃぐちゃ》
《ハノイの旧市街》
《旧市街のお店》
《ショッピングセンター(ロッテセンター)》
ベトナムはフランス領土時代があったため、ヨーロッパを思い出させるような場所が多くまだ残っています。フレンチコロニアルを受け継ぐゴシック建築のような建物も多く存在します。例えば、聖ジョセフ大聖堂。一歩中に入るとまるで、フランス。ステンドグラスに囲まれた教会はまさにノートルダム大聖堂の中。天使や聖人がステンドグラスに描かれていて、とても心が癒される空間です。
《聖ジョセフ大聖堂》
《聖ジョセフ大聖堂内、ステンドグラスの数々》
《聖ジョセフ大聖堂内、ゴシック建築が感じられる設計》
ベトナムの医療について
ベトナムでは診療報酬は省によって異なります。また、公立病院と私立病院で得られる収入も異なり、病院の運営やステータスが大きく違うのを感じます。公立病院で勤務する医療従事者は国家公務員であり、社会的ステータスが高く、国から多くの恩恵を受けています。
それにもかかわらず、公立病院は何故か機材や施設は古く、私立病院に比べたら野戦病院のような感じです。都心にある公立病院は患者で溢れているのが現状で、ハノイやホーチミンにある病院では120-160%の患者を受け入れています。一つのベッドを2人の患者でシェアしている場合も少なくありません。一方、私立病院では治療に必要な機材や医師が十分に配置されており、公立と私立病院の格差を感じます。検査や治療によっては、ベトナムから日本、シンガポールやタイに行く、富裕層の方も少なくないそうです。
《私立病院内》
《私立病院の病室内》
ベトナムの看護について
公立病院は広く、日本の昭和の頃を思い出すような、おじいちゃんやおばあちゃんが行くような田舎にある病院といった印象です。伝統医療(鍼灸や漢方を使った治療法)など西洋医療にはない科があります。病院のロビーは一見、患者がすごくいるように感じましたが、半分の方は家族か付き添いの人だと現地のガイドさんから教えてもらいました。看護師の位置付けはドクターのアシスタントという感じで、あまり責任のある仕事もなく、どちらかと言うと日本の介護士的な役割です。
《公立病院》
私立病院の看護部長に採用時に一番大事にしているポイントを尋ねたところ、「ルックス」と答えられたことに視察に行った全員が「えっー」と声を出したほど衝撃が走りました。この時代にこんなセクハラ的なコメントが通用するところに正直、研修に参加した20代の方々には驚きを隠せなかったご様子でした。ベトナムの看護はアメリカや日本の看護レベルにまだまだ届いていない感じがしましたが、命を扱う意味では世界共通で、ベトナムの看護師の熱い思いや日々の努力はすごく感じます。
《私立病院の看護師》
《私立病院の受付》
ベトナムの患者さんの中では、入院中のストレスを看護師にぶつけたりすることは日常茶飯事のようです。ですので、私立病院では採用時にルックスを重視して、日々の患者さんの入院生活が和らげられるようにしているとの事。日本では考えられない発想ですね。
ドクターの多くは海外でのご経験や留学のご経験があるようで、英語が話せる方が多いようです。
ベトナムで看護師を目指している学生さんも、英語で看護課程を1年余分にかけて看護師を目指している方が多くいました(普通の看護課程は4年、英語で看護科を取っている方は5年間勉強します)。それは卒業後、海外で働くことを目標にしているからです。ベトナムの医療のトップと言えるハノイ医科大学を訪問した時に、看護師を目指している大学生のほとんどが第二言語を話せることにびっくりしました。英語、日本語、中国語、ドイツ語と幅広かったことに驚きました。中には卒業後、ドイツの大学病院で勤務が約束されている方もいました。ハノイ医科大学ではグローバルに対応できる看護師の育成を目指していて、現在、授業の殆どが英語で実施されていて、California State University, Long Beach のナーシングカリキュラムを導入しているそうです。看護学科の教授も英語がとても堪能でした。
《ハノイ医科大学の看護学部》
《ハノイ医科大学の伝統医療科》
《ハノイ医科大学の学生》
《ハノイ医科大学の学生と交流》
ベトナムではEPA(経済連携協定)を介して、看護、介護の技能実習や特定技能、留学などで日本へ行く機会が増え、医療系人材の市場は大きな動きを見せています。それでも、医療職としてのルートは限られており、日本で看護師として働きたいと考えるベトナム人にとっては、まだまだハードルが高いようです。
私立病院訪問時に、EPA制度を利用して、日本で看護師の国家資格を取得したベトナム人看護師のAさんと話す機会がありました。Aさんは来日後、まず、介護のアシスタントをしながら日本語を勉強し、およそ3年かけて日本で看護師免許を取得されました。免許取得後は地方の病院で働いていたそうですが、文化の違いなど様々な事に直面し、とても大変な毎日だったと振り返られていました。日本の方はとても優しく、お給料もたくさんもらえて生活するには良かったですが、やはりベトナムやベトナムにいる家族が恋しくて、帰国を決められたそうです。Aさんは「いくらお給料がよくても、もう日本では看護師をしたくない」とお話しされていました。はっきりとおっしゃらなかったですが、そこにはやはり文化の違いが大きかったのではないかと感じました。
ベトナムと日本の医療の違い
日本では考えられませんが、ベトナムでは診察を受けるのに、まるで商品を購入するかのようなネット上の広告がよく記載されています。例えば:「◯◯検査と◯◯検査を同時に受けると50%安くなります」など、日本では考えられない医療広告がたくさんあるそうです。日本と大きく違うのは、恐らく、ベトナムの多くは混合診療になっているためだと思います。日本では混合診療は禁じられているため、症状に合った科へ受診します。ベトナムも日本同様、医療費は出来高制を基本としていますが、ベトナムの場合は、価格が省ごとに異なり、診療報酬体系が全国統一されていません。
《ベトナムの医療広告》
ショッピング&観光
ハノイの旧市街には女子がときめく可愛く、プチプラな雑貨屋さんがたくさんあります。街を歩くだけでもインスタ映えする通りがたくさんあります。
《ハノイ雑貨色々》
《ハノイ雑貨色々》
その中でも、印象に一番残っている場所は「トレインストリート」。
建物の間の狭い路地に線路が敷かれていて、一日に数回電車が通ります。
電車が通らないときは住民の道として利用されています。(2019年の10月までは観光客も普通に歩くことができましたが、2020年1月に行った際には規制されていました。)線路沿いのカフェを利用する人は、線路の上を歩く体験は出来るようですが、線路沿いのカフェの利用が必須になります。電車は本当にギリギリまで通るみたいで、ヨーロッパからの観光客を特に魅了しています。
《トレインストリート》
《線路上を歩く》
《電車が本当に間近に》
とにかく町の中は原付とバイクが多く、はじめは「絶対にひかれる」と思っていましたが、現地の人は本当に運転が上手で、うまく避けて通ってくださいます。
《道はバイクでぎっしり》
屋台について
お腹が弱くない方であれば、ぜひ町の屋台やカフェでの食事にトライしてみてください。バインミー(フランスパンのサンドイッチ)やフォー(お米の麺)を食べてみるのがオススメです。バインミーはフランスパンの中にベトナムのピクルス(酢漬けの野菜)とベトナムハムなどがサンドされている国民食です。コリアンダー(パクチ)がかなりたっぷり入っていますので、とてもエスニックで東洋と西洋がうまく融合したような感じのサンドイッチです。ベトナムコーヒーと一緒に食べると最高のランチです。ベトナムコーヒーの基本はフレンチプレスした苦味の強いコーヒーを練乳と一緒に混ぜて飲むコーヒーで、すごく甘く、暑いベトナムにはこの甘さが体力を復活させてくれます。
《ベトナムコーヒーとバインミー》
ベトナムの代表的な麺料理といえば、フォーですね。スープが淡麗で濃厚。地元でしかいただけないハーブがたくさんのっているので、レモンを搾って、スパイスの効いた調味料をかけて食べるともう虜になること間違いなし。現地の人は揚げパンをスープに投入して一緒に食べます。
《フォーの屋台、フォーティン》
《ベトナム国民食のフォー》
《フォーに入れる揚げパン》
《屋台、空いた席を探すのが大変》
食後のデザート
デザートにチェー(ベトナムの代表的なデザート、小豆、タピオカ、蓮の実、栗やゼリーなど入っている)がオススメです。チェーの専門店屋さんが至る所にあります。そこで写真を見て、食べてみたいものを指さしでオーダーすれば、親切な店員さんがすぐにその場で作ってくれます。個々のお店で独自のスペシャルチェーがありますので、それを頼むのもいいかもしれません。味のベースはココナッツミルクを使っているものが多いです。(氷はちゃんとした水を使っているので、安心して食べていただけます。地元の方が多く入っているところは間違いないと思います。)心配でしたら、レストランやホテル内のレストランで食べる事をオススメいたします。
《ベトナムの代表的デザートのチェー》
果物について
気温は比較的に暖かく、湿度が高いベトナムには珍しい果物がたくさん食べられます。代表的なのがドラゴンフルーツ、ロンガン、マンゴスチン。その中でも存在感があるのは果物の王様と呼ばれているドリアンでしょうか。匂いはまるでトイレ。でも、好きな人にはたまらないクセになる味。まるで濃厚なチーズを食べているかのような感じがするフルーツです。日本で食べるとしたら丸ごと購入すると冷凍で8千円から1万円はしますが、ベトナムでは千円ほどでフレッシュ丸ごと買えるので、ぜひチャンスがありましたら怖がらずにチャレンジしてみてください。不味くっても美味しくってもきっと、一生の思い出になるのは間違いなしです。
《果物屋さん》
《ドリアン、ドラゴンフルーツ》
《匂いが強烈なドリアン》
《カットされたパイン、スイカ、とドラゴンフルーツ》
ベトナム人
ベトナム全土には合わせて54の民族が住んでおり、その内約9割を占めるのがキン族(ベト族とも呼ばれています)。残る53の民族が少数民族として定義されています。詳しくはハノイの民族学博物館で学ぶ事ができます。初めてベトナムを訪れる方にはとてもオススメなスポットです。
《民族学博物館》
ベトナムの男性
ベトナムでは男子は18歳から25歳を兵役義務の対象とし、2年間の兵役が義務付けられています。そのせいか、男性の方は皆細マッチョでとてもスタイルがいいです。そして、大学に行っている男子の殆どが二か国語を話せるので、とても知的に感じます。ヨーロッパの影響でしょうか、レディーファーストも心得ているので、女子はとてもいい気分になります。(現地のガイドのTさんはとてもガールズに優しく、モテモテでした。笑)
《現地ガイドのTさん》
ベトナムの女性
ベトナムの女性はアオザイ(ベトナム民族衣装)が似合うスレンダーの方が多いです。食文化(野菜中心食)でしょうか、みなさんかなり働き者でスリムです。現地ガイドのTさんが言うには、ベトナムの女性は性格が強めらしいです。私から見たらとても綺麗で頭が良くて、とても働き者が多いイメージです。働き盛りの20代女性は結婚後も家庭を支えるために働いて、家事は旦那さんと分担し、食事は外食が多いようです。これはアジアの国の特徴かもしれませんね。
《アオザイ》
ベトナムコーヒーVSエッグコーヒー
ベトナムコーヒーと言えば、練乳と混ぜて飲むものが一般的ですが、現地の方はエッグコーヒーもオススメと教えてくれました。これは新鮮な生たまごと練乳を一緒にホイップしたものをフレンチプレスしたコーヒーにのせたドリンクです。クリームはとても濃厚で、まるで溶けたプリンかカスタードクリームがのっているようなデザート感覚のコーヒーです。ベトナムの首都ハノイの旧市街にあるお店「CAFE GIANG(カフェ ジャン)」が発祥の地として知られています。
《エッグコーヒー》
《CAFE GIANG(カフェ ジャン)》
《ベトナムコーヒー》
ちょっとびっくりのベトナムのトイレ事情
観光客が多く出入りするところには洋式トイレはもちろんですが、近代的でキレイ且つ機能的なトイレが設置されています。しかし、まだまだ現地の方が使用する一般のトイレは決してキレイとは言えないかもしれません。インフラ整備が追いついていないせいか、多くのトイレではトイレットペーパーは流せません。トイレの横にゴミ箱が置いてありますので、大で使ったペーパーも小で使ったペーパーも同じゴミ箱に入れます。もっとひどい所だと、流す際にトイレの横に設置してあるホースを使って流す所も少なくありません。アジアの国では多くの場所にこのようなトイレを見かけます。
《一般トイレ》
《一般のトイレ、ホースが左側にあります》
《一般のトイレ、ペーパーはゴミ箱に》
でも、ご安心ください。ホテル、レストランやショッピングセンターにあるトイレは日本と同じような感じで普通にキレイです。
知っていますか?ベトナムではカカオ豆が取れる事?
カカオ豆と聞くと、ガーナやコートジボワールなどのアフリカ産のものを思い浮べる方が多いかもしれません。生産量は多くないものの、ベトナムでもカカオ豆が栽培されており、その味の美味しさは各国のチョコレートファンからも注目を浴びています。
「Pheva」(フェヴァ)のチョコは南部ベンチェ省でとれるカカオ豆が原材料。フランスで培われたショコラティエのノウハウを融合させた手作りチョコレートです。一口サイズのチョコは自分の好きな色のボックス(12個入または24個入)に好きなフレーバーを詰めることができ、購入時には選んだボックスと同じ色の紙袋に入れてくれます。アソート(詰め合わせ)もありますので、フレーバーに悩んだ時にはぜひアソートをトライしてみて下さい。
《チョコレート屋「Pheva」(フェヴァ)》
ベトナムのもう一つの名産品!?ベトナムはカシューナッツ大国
実は、ベトナムはカシューナッツ輸出国第一位の国!日本で購入すると少し高めのカシューナッツはベトナムの市場ではかなり安くで購入できます。日本でよく見るのは皮が無い物が多いですが、ベトナムでは皮付きのローストされたカシューナッツが一般的です。皮ごと食べてもすごく香ばしくって美味しいのです。カシューナッツは低カロリーで鉄分、カルシウム、ビタミンB1も含まれているので、少し多目に食べて大丈夫です。
《ベトナム産カシューナッツ》
まとめ
看護研修でベトナムに行って新しい技術や看護について学べるかどうかと聞かれると、先進国であるアメリカで看護を学ぶのとは少し違うと思います。しかし、私たちが日本と他国の(ベトナム)看護の違いについて学ぶ事によって、日本の看護の素晴らしさを再確認することができます。学ぶだけではなく、発展途上国のベトナムの医療従事者に日本の看護や医療について教える事はできるかもしれません。実際に、私立病院の看護部長からは日本の看護学生が学んでいる知識はベトナムの看護師が知っている知識以上のものがあるから、意見交換ができるだけでもすごくメリットがあると言っていました。
看護の視点以外で考えると、異文化体験ができるのがベトナム旅行の醍醐味。ベトナムは社会主義共和国、日本の医療政策、医療制度、そして看護との違いがあって、現地のベトナムで施設視察や医療従事者との意見交換はとてもいい体験になるのは間違いないでしょう。先進国のアメリカやヨーロッパでの体験より異文化体験の視点から見るとその違いはより大きく感じられるかと思います。そのびっくりした感じが特に日本の学生にはいい体験で、研修後には学生がひとまわり大人になった事を感じました。
《空港近くから見た夕日》