看護・高齢者ケアプログラム体験談・視察レポート

世界で唯一、ボランテイアが主体となって運営しているホスピスがオーストラリアのクィーンズランド州イプスイッチ市にあります。ここは、ブリスベン市から西南へ26km、有名なリゾート、ゴールドコーストから車で北西2時間に位置する人口15万人の可愛い町。1970年、退職後にドイツから移住してきたヒルダ女史(当時62歳)が、娘をガンで亡くした体験からホスピス建設を決意。1985年から運動を始め、周到な準備と精力的な募金活動を行って1994年に完成したホスピスです。設立時1床から始め、現在は6床。24時間看護で入居料は無料。イプスイッチ市とその周辺地域に根ざした地域住民のためのホスピスとして住民に愛され、深い信頼感で支えられています。

施設長のロスさん[中央]とボランティアの方とともに
ここは患者さんをゲストと呼び、部屋は全て個室。平均の在院日数は約12週間。室内はアットホームな安らぎにあふれた雰囲気。家族とともに終末期のかけがえの無い時間を静かに過ごしています。ゲストが亡くなられた後の家族へのブリーブメントサポートも手厚く、専任のボランテイア達が1年間フォローをしています。
この施設の特徴は、質の高いボランテイア教育を受けたボランテイア達によって運営されている点です。常勤の有給スタッフは4名のみ。施設長(看護部長)、ナース、シェフ、ボランテイアコーディネーター。他にパートタイムの有給スタッフが20名います。登録ボランテイアは現在220名。希望者は、お金を払って半日x8~10週間の基礎研修を受けた後に、適性に応じた仕事のボランテイア活動を認められます。
経営責任者(CEO)もボランテイアで、市在住の著名な弁護士が、週10時間、無給ボランテイアとしてホスピスの経営に当たっています。運営費の40%は連邦政府からの助成金。60%は、自らの手で稼ぐ収益事業と、寄付。興味深いのは、収益事業として経営しているIPSWICH Bargain Centreという名前の「古着と古い家具のセコハンショップ(リサイクルショップ)」。街の一番の繁華街にある30坪の店で、2人の有給スタッフと15 人のボランティアで1年目から黒字を出し、2年目の昨年は500万円の経常利益を出したとのこと。隣に「古本のリサイクルショップ」も併設。こちらは、利益がまだ出ていない。IPSWICH Bargain Centreの方は、トラックを1台持っていて、リサイクル品があればすぐに自宅まで取りに来てくれるというのが評判となり、無料で引き取ってくれて、それが、ホスピスへの寄付になる。どうせ捨てるのなら役立つ方が嬉しいということで提供してくれる人は多く、また、質の良い品物が豊富でコーヒーカップ1 セット2ドルとかブラウス4ドルなど破格の安さでこれまた評判。更に利益が高まって、ホスピス運営に寄与しています。
●イプスイッチ市は東京都練馬区と姉妹都市。市内には、「練馬ガーデン」という名の日本庭園があり、乾燥した気候の中でも手入れは上々、見事な「純粋日本式庭園」が市民の憩いの場所になっており、また現地の新婚カップルの記念撮影のメッカともなっています。町のスローガンは「長寿と健康の町」。市議会が積極的に協力して、市内の総合病院や高齢者ケア施設ともに健康づくり運動を行っています。万歩計を無料配布して、年1回記録者を表彰したりして、市民の予防医療を促進しています。
ホスピスのカンファレンスルームのテーブルの上にさりげなく置かれていました“入れ歯型のお菓子デス!” オーストラリアの人々はユーモアセンス抜群ですね。
こういうユーモアグッズがホスピスの中にも置いてあるというところに「心の余裕」を感じて、素敵です。入れ歯のお菓子がオカシクテ報告いたしました。
入り口の看板
(蘇るチョウがシンボルマーク)
素敵な施設長
(元大病院の看護部長)
ホスピスの正面玄関
目抜き通りにある
リサイクルショップの全景
店内の表示「ホスピスへのサポー
トに感謝します」
店内のボランテイア達
創設者のヒルダさん
(2002年2月没)
夫をガンで亡くした後、ホスピスで10年間ボランテイアをしている方のお話を伺いました。
名物“入れ歯型のお菓子”
<記:トラベル・パートナーズ 代表取締役 戸塚雄二>