看護・高齢者ケアプログラム体験談・視察レポート
2010年11月、前年に引き続いて徳洲会グループ「第2回オーストラリアがん看護・緩和ケア研修」に随行して、メルボルンとイプスウィッチへ行ってきました。
徳洲会グループでは、増加するがん疾患に対応するため、全国65か所のグループ病院で多くのオンコロジー病棟の設置を推進しており、がん看護・緩和ケアの先進的ケアを実践しています。現場でケアを実践するナースの専門性を高め、質の高いがん看護を学ぶため、遊佐千鶴看護統括(湘南鎌倉総合病院副院長)の提案で、昨年からオーストラリアで最先端がん看護・緩和ケアを学ぶ研修が実施されています。今回参加された皆さんは、すでに現場でがん看護担当ナースとして活躍している方々やこれから開設されるオンコロジー病棟に配属される予定のナースなど、全国のグループ病院から選ばれたナースの方々18名。引率は、千葉西総合病院佐藤看護部長と帯広徳洲会病院の白幡看護部長。より専門性の高いがん看護・緩和ケアの看護実践のために、真剣に学んできました。
日程は、メルボルン3泊、ゴールドコースト1泊。4泊7日間。
研修では、ピーターマッカラムがん専門病院、セントビンセント病院、バンクシア緩和ケアセンター、イプスウィッチ・ホスピスの4箇所を訪問しました。
オーストラリアは人口2100万人、160数カ国からの移民たちが織り成す多国籍文化の国。医療の現場では、患者も医療者も多言語・多国籍。死生観の違い、家族との関わり方の違い、宗教的な背景とその理解。日本の医療現場とは異なる点もありますが、ともに国民皆保険制度があり、そして、医療費用の高騰、医療者の不足、高齢化への対応、在宅医療・介護の重要度の高まりなど、日本と同じ問題を共通しいています。政治も医療現場もフレキシブルに対応して、革新的なケアの実践を続けているオーストラリアの取り組みの中に、日本の医療・看護への大きなヒントが見えてきます。
がん発症率は、近年オーストラリアでも非常に高くなっており、国全体としても医療の最大課題として取り組んでいます。
今回の研修も、「がん看護・緩和ケア」をテーマに、活発で貪欲な学びとなりました。
まず初日は、現在ロイヤルメルボルン病院で勤務している日本人ナースの中野由布子さんのレクチャー。日豪の臨床経験があり、また、今回研修する「がん専門病院ピーターマッカラム」での臨床経験もある中野さんから、「オーストラリアの医療制度、日豪の違い、かかえている問題点など」について、文化的な背景を含めてわかりやすくレクチャーしていただきました。
オーストラリアで唯一のがん専門病院。外来患者数年間約20万人、入院患者数年間のべ約2万人、日帰り治療患者はのべ約1万5千人。世界最高レベルのオンコロジーケアを提供しています。今回は、ピーターマックにおける「がん看護の実践」、「発見~告知~入院治療~在宅~死に至る流れの中でナースや他の専門職がどのように有機的に患者に関わっていくか」に焦点を当てて学びました。特に、肺がん患者(30歳男性)の症例は、担当したクリニカル・ナーススペシャリストから「ジョンの物語」と題したプレゼンがあり、多職種チームとして最後まで生を全うする患者へのサポートをどう行うかという具体的な実践に理解を深めると共に、がん看護の実際における、ナースコーディネーターの果たす役割や、退院後の連携、コミュニテイナースや訪問看護との連携、についてよく理解することができました。
ピーターマッカラム病院(通称ピーターマック)。2015年には新館が建築されます。
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教育担当コーディネーター
看護業務デイレクターほか各担当者からの説明
「ジョンの物語」と題した肺がん患者の症例説明をいただきました
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ピターマック@ホーム(がん患者の在宅ケア)
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全員キャップとガウンを着てICU見学
最新モニター設備のある手術室
ICU担当看護師長の説明
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ピーターマックの前で記念撮影
438床のセントビンセントはメルボルンを代表する総合急性期病院ですが、ビクトリア州でも毎年急増しているがん患者に対応するため2010年10月に新しくオンコロジー緩和ケア専門病棟を拡大改築しました。
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会議室からの眺め
緩和ケア病棟のエネルギッシュな看護師長 「この病棟は私のお城ヨ!」と誇らしく語られたのが印象的でした
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皆さん笑顔がステキです。
多言語対応の病院資料
患者の移動は必ずホイストを利用します
新品のナース用ロッカー
新築オープンまもない最新のオンコロジー病棟を見せていただきました
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緩和ケアベットの窓からは一番良い眺めが楽しめます
礼拝用の部屋。どの宗教を信じる方でも使うことができます。
<記:トラベル・パートナーズ 代表取締役 戸塚雄二>