看護・高齢者ケアプログラム体験談・視察レポート
私は日本で看護師をしていましたが、退職を機に、以前から興味があったスウェーデンでなんとか実際の看護・介護の現場を見ることが出来ないかと探していたところ、トラベルパートナーズさんのサイトにたどり着きました。
スウェーデンと聞くと、医療や介護職に従事していなくとも、福祉に手厚い国ということで知られていると思います。
そして今回、スウェーデンでの看護・介護を体験することができて、スウェーデンでの看護・介護に対する考え方や実際の現場を体験するとことができ、本当に充実した素晴らしいものになりました。
もともと海外留学の経験もあり、海外に住むことには多少は慣れていたので、不安というよりは期待に胸を膨らませ、研修に臨みました。とはいっても、スウェーデン語は話せませんし、思ったように実習が行えるのかなど不安があり、前日は緊張して眠れませんでしたが、、、。
幸い、日本から他に2名の方が研修に参加されるとのことで、初日にお会いしてからその不安は無くなりました。同職であることで、すぐに打ち解けて、楽しい時間を過ごすことが出来ました。
最初の2週間をナーシングホーム、あと1週間をデイケアセンターで実習を行いました。
実習先のナーシングホームはストックホルム中心部から、バスを2回乗り継ぎ通っていたので、毎日がちょっとした小旅行のような感じでした。首都であるストックホルムを一歩出ると、湖が点在し自然溢れる景色で、車窓からの美しい眺めに毎日癒されていました。
ホームの周辺も同じような環境だったので、利用者さんを連れてのお散歩コースは森の中や湖畔を歩く、本当に素敵な場所でした。散歩中に運良く子鹿に出会う場面も訪れました。こんな素晴らしい環境で、老後を過ごせるスウェーデンの方達は羨ましいなと思いました。
スタッフの方々は、ご老人の最後の時間を一緒に過ごさせて頂いてる、本当の家族のように毎日を過ごしていると聞きました。日本ですと、毎日決められたスケジュールのもと何かしらのレクリエーションや清潔ケアに追われているような所がありますが、スウェーデンでは本人の意思を尊重した介護がなされていると思いました。また驚いたのは、食事中にビールなどのアルコールが提供されること、決められた場所であれば喫煙も可能であるところです。施設の設備も全室個室のシャワー・トイレ完備で、お部屋にはそれぞれの自宅から家具やカーテン、調度品などを運んできているため、自宅にいるのと変わらない環境作りがされていました。
ホームの建物。19世紀の建物がホームとして利用されている。一階は施設。二階からはアパートメントになっている。
スウェーデンの税金は高く、所得税ですと3~5割を支払う義務があります。その他に消費税は25%と決して安くない状況ですが、しかし、これだけの手厚い介護を受けられるのであれば、老後を不安に思うことは少ないのではないかと思いました。他に社会福祉の面でいうと、大学までは学費無料、医療費も20歳以下と85歳以上は無料、ホームなどの施設の支払いも1ヶ月20000円が上限で、もしそれも払えない場合は無料で入居出来るそうです。
スタッフの皆さんが楽しそうに仕事をされているので、ここで働くことが出来て幸せか?ときいてみたところ、皆さんが自信を持って"Yes"と答えていました。
長い休暇が取れたり、1日の労働時間も6時間制で残業はほぼ無く、働く側の環境も考えられているのだなと感じました。
実習中は毎日一人の方について、シャドーイングを行い、慣れてきた頃には一緒にオムツ交換や車椅子移乗などを行なっていました。お食事の時間は、利用者さんと同じテーブルで食事を摂り、軽介助が必要な方の隣に座り、見守りながら食べたりしていました。私の行ったホームは、4つユニットがあり各10名の方が住んでいました。そのユニット毎にキッチンが完備されており、そこで毎食調理がされていました。勤務は三交代制ですが、夜勤は専従の方がみえたので、ほぼ二交代制でした。
ホームにはシルビアナースと呼ばれる、王室が設立した認知症専門看護師を養成する学校を卒業された方が在籍しており、認知症ケアについても教えて頂きました。70歳代の女性で、認知症を患い、ホームでも時々情緒が不安定になることが多々あったため、リラックスの目的で毎朝1時間以上の散歩を取り入れているということで、同行させて頂きました。彼女はADLは自立しているものの、認知症により、重いストレスを感じていることも多かったそうです。毎朝の散歩を取り入れたことで、少しづつ改善が見られいると言っていました。自然の中で散歩することで、風や空気、緑や散歩中の犬に出会ったりすることで、自然と笑顔がこぼれ、心がリラックスしているのだと感じました。認知症専門看護師として、一人一人に合った十分なケアがされていることに感動しました。スウェーデンでは、挨拶の時にハグをします。そして、みんなが笑顔になります、そんな穏やかな空気がいつも流れていました。
私もこんな環境で働いてみたいと思いました。
ホームの中庭。自由に出入り可能で、天気の良い日は日光浴を楽しんでいる。
残りの1週間はデイケアセンターでの実習でした。朝10:30ころから、利用者さんが送迎車から降りてくるのをエントランスで待ち、挨拶の後にハグをします。
そのあとは皆さんで一緒に朝食を摂ります。自宅で食べて来られる方もいらっしゃいますが、独り暮らしの方も多く、中には自宅での食事の支度が面倒な為に少食となり栄養不足になることが心配されるため、食事が重要視されています。朝食の他に昼食とおやつの時間があります。デイサービスに来てスタッフや利用者さんと楽しくお話しながら食事を食べて頂き、栄養不足にならないように援助されていました。
独り暮らしで孤独にならないような配慮もされていました。その日にやる事もみんなで話し合って決めます。クイズをしたり、ビンゴゲームをしたり、天気のいい日は外に出お散歩に出かけます。それもやりたい人だけ参加します。散歩に行きたくない人や歩行の不安な方は、残ったスタッフとおしゃべりしたりしていました。ここでも本人の意思を尊重されていました。
14:30にはまた送迎車が来るため、エントランスまで一緒に行き、ハグして終わります。スウェーデン人にとってハグはとっても大切なコミュニケーションなのだと思いました。
デイケアセンターでの朝食。
デイケアセンターのダイニングテーブル。みんなで食卓を囲み、楽しく談笑しながら食事をする。
ホーム周辺の湖
一年間トレーニングを受けたセラピー犬が週に一度訪問
車椅子を押しながら、ホーム近くを散歩
今回3週間という短い期間でしたが、スウェーデンでの看護・介護の素晴らしさや、スウェーデン人の優しさに触れ、本当に忘れられない経験が出来ました。
スウェーデンという国も、夏が短く、物価も高いので、長期に滞在するのは難しい部分もありますが、本当にステキなところなので、また訪れたいと思いました。
この様なプログラムを組んで頂き、また出発までの準備の時に親身になって力を注いで下さったトラベルパートナーズと萩田さん、そしてスウェーデン滞在中に色々と助けて下さったエミール氏に感謝致します。ありがとうございました。